小谷実由さんが憧れた“大人のセーター”

上品な落ち感と滑らかな肌触りが魅力のコットンストレッチセーターはこれからのシーズンにぴったり。モデルの小谷実由さんにとって、暖かい季節に着るセーターは幼い頃に憧れていた“大人のおしゃれ”アイテムのようです。セーターにまつわる小谷さんのエッセイをお楽しみください。

 私は寒い季節の服が好きだった。理由はただひとつ、大好きなセーターを着ることができるからである。セーターは寒い季節のものであると思っていたし、クリスマスには愛おしい人に手編みのセーターを贈る将来を夢見ていた。しかしここ数年で、その常識が覆されている。暖かい季節でもセーターを着ることができたのだ、私の目の前に“サマーセーター”という存在がひらりと落ちてきた。

 幼い頃、暖かい季節に母や祖母が着ていたよそいきの服や、ファッション誌なんかで見かけていた半袖やノースリーブのセーターというちょっと暑そうで不思議な存在。それがサマーセーターだったということはつゆ知らず、心の片隅では可愛いなぁと羨望のまなざしを向けていたけれど、子供の自分とは無縁の世界だと思っていた。夏にセーターを着れるのって大人だけなのかと思っていたよ、大人だから暑いのも我慢できて、着ることができる特別なものだと。

 そんな幼い私が想像していた「暑いのを我慢してセーターを着れる」程度の大人になったであろう現在の私は、つい最近その不思議な存在の謎が解けたばかりである。なんとサマーセーターは通気性が良くて涼しかったのだ。その事実を知ったときは、タイムマシンに乗って幼い頃の私にこの事実をそっと教えてあげたくなった。ちょっと悔しさに似た気持ちも相まって、それを知ってからは毎年、幼い時の憧れを埋め合わせるかのようにサマーセーターを集めている。今年はこのテラコッタ色の一着が始まりだ。

 幼い頃から憧れていたおしゃれを、大人になったいま実現するという行動をよくする。真っ赤なワンピースや引きずるくらいのロングコート、転ぶからやめなさいと言われて履けなかったヒールの高い靴、サマーセーターもまたそのひとつ。はたして過去の私は喜んでいるだろうか、「いま(過去)の私がそれを着れなくちゃ意味がないなぁ」なんて文句を言われそうな気もするけど、そんな過去の私の延長線上にいる現在の私は、もちろん嬉しいと思っている。子供の頃に憧れていたものと現在の自分が好んでいるものが変わっていないこと、それはなりたかった大人になれている気持ちさえしてくるわけで、私はなんてハッピー野郎なのだろうと思う。さあ次は、憧れのベリーショートにでもしてみようか。

小谷実由さんが憧れた“大人のセーター”

上品な落ち感と滑らかな肌触りが魅力のコットンストレッチセーターはこれからのシーズンにぴったり。モデルの小谷実由さんにとって、暖かい季節に着るセーターは幼い頃に憧れていた“大人のおしゃれ”アイテムのようです。セーターにまつわる小谷さんのエッセイをお楽しみください。

 私は寒い季節の服が好きだった。理由はただひとつ、大好きなセーターを着ることができるからである。セーターは寒い季節のものであると思っていたし、クリスマスには愛おしい人に手編みのセーターを贈る将来を夢見ていた。しかしここ数年で、その常識が覆されている。暖かい季節でもセーターを着ることができたのだ、私の目の前に“サマーセーター”という存在がひらりと落ちてきた。

 幼い頃、暖かい季節に母や祖母が着ていたよそいきの服や、ファッション誌なんかで見かけていた半袖やノースリーブのセーターというちょっと暑そうで不思議な存在。それがサマーセーターだったということはつゆ知らず、心の片隅では可愛いなぁと羨望のまなざしを向けていたけれど、子供の自分とは無縁の世界だと思っていた。夏にセーターを着れるのって大人だけなのかと思っていたよ、大人だから暑いのも我慢できて、着ることができる特別なものだと。

 そんな幼い私が想像していた「暑いのを我慢してセーターを着れる」程度の大人になったであろう現在の私は、つい最近その不思議な存在の謎が解けたばかりである。なんとサマーセーターは通気性が良くて涼しかったのだ。その事実を知ったときは、タイムマシンに乗って幼い頃の私にこの事実をそっと教えてあげたくなった。ちょっと悔しさに似た気持ちも相まって、それを知ってからは毎年、幼い時の憧れを埋め合わせるかのようにサマーセーターを集めている。今年はこのテラコッタ色の一着が始まりだ。

 幼い頃から憧れていたおしゃれを、大人になったいま実現するという行動をよくする。真っ赤なワンピースや引きずるくらいのロングコート、転ぶからやめなさいと言われて履けなかったヒールの高い靴、サマーセーターもまたそのひとつ。はたして過去の私は喜んでいるだろうか、「いま(過去)の私がそれを着れなくちゃ意味がないなぁ」なんて文句を言われそうな気もするけど、そんな過去の私の延長線上にいる現在の私は、もちろん嬉しいと思っている。子供の頃に憧れていたものと現在の自分が好んでいるものが変わっていないこと、それはなりたかった大人になれている気持ちさえしてくるわけで、私はなんてハッピー野郎なのだろうと思う。さあ次は、憧れのベリーショートにでもしてみようか。

小谷実由
おたに・みゆ/ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、様々な作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。昭和と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。
Instagram:@omiyuno



Photo&text: Miyu Otani

小谷実由
おたに・みゆ/ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、様々な作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。昭和と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。
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Photo&text: Miyu Otani